【加害恐怖】 他人の自転車を壊してしまったかもしれない
私が経験した強烈な加害恐怖体験の一つが、「他人の自転車を壊してしまったかもしれない」事件です。
正確には、『自転車』ではなく、『自転車のライト』です。
事件の発端
その日、私は所用のため、オフィスと商業施設が一体となった大型ビルを自転車で訪れました。
ビルの1階にある駐輪場は既に満車状態。
満車どころか、わずかな隙間にも自転車が詰め込まれるように駐輪されていました。
朝の通勤電車は乗車率200%になることも普通ですが、この駐輪場も駐車率200%といったところでした。
私も隅っこのわずかなスペースに駐輪しようとして、自分の自転車を持ち上げたときのことです。
ガシャーン!!
私の自転車のタイヤが何かにぶつかったのです。
ふと地面に目をやると、小さなプラスチックの物体がそこに・・・。
そして、その脇にある自転車のライトはカバーが外れ、電球が剥き出しの状態に・・・。
つまり、私の自転車のタイヤがぶつかったのは、他人の自転車のライトだったのです。
すぐに地面に落ちているライトのカバーを拾い上げ、その脇の自転車のライトに被せました。
すると、パチンと音がしてピッタリはまったのです。
試しに点灯させてみましたが、ちゃんと点灯します。
「あ〜よかった、直った〜。」と思い、私はその場を立ち去りました。
加害恐怖が始まる
目的地のビルの中に入り、所用を済ませようと思ったのですが・・・、
さっきの自転車のライト・・・実は壊れているんじゃないか・・・?
ちゃんと点灯したけど、ぶつかった衝撃でどこかにヒビが入っているかも・・・?
どこかしらに異常が現れているんじゃ・・・?
という考えが、心に芽生えて始めたのです。
この妄想はさらに加速します。
自転車の持ち主が戻ってきてライトの異常を確認
⇒駐輪場の管理会社や警察に相談
⇒監視カメラの映像から私が容疑者として浮上
⇒事情聴取
⇒逮捕 or 損害賠償請求
本当に壊れていれば賠償しなきゃいけませんが、ちゃんと点灯したのを確認したし、壊れてるようには見えなかったし、そもそも100円ショップで売っていそうな安っぽいライトだし、超混雑した駐輪場なのだから他の自転車とぶつかるくらいは普通は許容して駐輪すると思うのです、冷静に考えれば。
万が一、ライトが壊れていても、駐輪場の管理会社や警察に連絡する可能性なんてほぼゼロだろ〜。
ましてや、明らかに故意じゃないのに逮捕なんてありえないよな〜。
いやいや、壊したのが故意じゃなくても、その場を立ち去ったのなら逮捕もありうるんじゃないか?
当て逃げだよな?
それに、自転車のライトの値段が安いか高いかなんて関係ないし・・・。
駐輪場が混雑しているかどうかも関係ないぞ。
賠償請求はまだしも、逮捕だけは絶対に避けたい・・・。
よし、すぐ近くに交番があったから相談に行くか!
そうすれば逃げたことにはならないからな。
いや待て!
どう見ても壊れていないライトを壊してしまったかもしれないって警察に相談しても相手にされないぞ!
それどころか、事がややこしくなるだけじゃないか?
じゃあ警察はやめて、駐輪場の管理会社に連絡しよう!
ということで、駐輪場の壁に書いてあった電話番号に連絡しました。
私「他人の自転車のライトを壊してしまったかもしれないんですけど・・・いや、たぶん壊れてないんですけど・・・どうしたらいいでしょうか・・・。」
管理人「はぁ・・・どうしましょうかね・・・。」
私「私の名前と連絡先を管理人さんに教えるので、もしも持ち主の人から問い合わせがあったら私に連絡するように伝えてください。弁償するので。」
管理人「わ・・・わかりました・・・。」
これで逮捕だけは避けられるはず。
ちゃんと身分と連絡先を明かしたのだから、逃げたことにはならないだろう。
しかしまだ不安だ・・・。
このままいつ架かってくるかわからない電話を待つのか・・・?
しばらくは眠れないぞ・・・?
よし、自転車の持ち主が戻ってくるまで駐輪場で待とう!
その場で事情を話して、ライトに異常がないか確認してもらおう!
そうすれば、全ての問題は解決するはずだ!
この不安も消えるはず。
ということで、夕暮れの駐輪場の出入り口付近で彼を待ち続けました。
ソワソワしながら2時間ほど待つと、彼は現れたのです!
ところが、彼は自転車にまたがったかと思うと、ものすごい早さで発進していなくなってしまったのです・・・。
話しかける間もなく消え去りました。
しかし、彼の自転車のライトはしっかりと点灯していました!!
もう大丈夫!
彼は普通にライトを点灯させながら帰って行ったのだから。
大丈夫。
ということで、一件落着。
不安は解消されました。
事件を振り返ってみて
この事件の以前に、既に数多くの加害恐怖体験をしていたので、今回は一抹の不安も残さないように徹底的に行動しました。
しかし、不安のタネを潰すために労力を使うのは、加害恐怖の根本的な改善につながらないだろうし、むしろ悪化を招くような気もします。
この時の私のとった行動は、加害恐怖を持つものとして適切なものだったのかはいささか疑問です。